物流におけるSDGsとは
物流が抱える課題とSDGsの関係、物流業界がSDGsに関する目標に対してどのように取り組んでいくかを考えます。また、物流業界においてSDGsに取り組んでいる具体的な事例をご紹介します。
物流業界の課題とSDGs
地球規模で起こっている問題に対して、物流業界としても取り組むべき部分が多くあります。現代の物流業界では、次のような課題を抱えています。
プラスチックの大量消費
世界的に大きな問題の1つとして、プラスチックごみの問題があります。プラスチックごみを減らすためには、プラスチックごみを管理できず流出してしまうのを防ぐ対策や環境整備が必要です。これと同時に、地球上に存在するプラスチック製品を減らすため、プラスチック製品の生産量と消費量を減らすことも大切です。
では、物流業界においてプラスチックはどのように消費されているのでしょうか。物流にかかわる業務の中で、商品の梱包には大量のプラスチックが使用されています。また、ものを運ぶ上で使われるパレットやコンテナ、発泡スチロールの箱などのマテハン用品にも、多くのプラスチックが使われています。これらのプラスチック製品はリサイクルされる環境整備が進んでいますが、まだまだ完全な循環にはほど遠いのが現実です。
トラック輸送への依存によるCO2排出
CO2の排出量削減は、世界で足並みをそろえ取り組んでいかなければならない問題です。日本では定めた目標ラインと同水準で推移しているものの、さらに取り組みを進めていかなければ、目標を達成できない状況です。また、先進国として世界に対する責任を果たすという意味でも、より高い削減量を目指さなければなりません。
日本国内の物流においては、全体の9割をトラック輸送が占めています。トラック輸送が多いことは、CO2排出量も多いことを意味します。物流業界にとって、CO2排出量の削減は大きな課題と言えます。
労働力不足
物流の中で、特に運送業界は労働力不足が深刻な問題となっています。配送が困難になった一時期に比べ改善はしたものの、依然として労働力不足の現状は続いています。労働力が不足しているということは、物流フローのあらゆる部分に関わる輸送工程に、不安がある状態が続いている状態です。今後どのようにして労働力不足を解消していくのか、新技術の導入やプロセスの改善など、あらゆる方向からの対策が求められます。
SDGsへの対応
世界的な目標として提唱されたSDGs(持続可能な開発目標)は、これからの地球環境や人の生活をどうしていくかを定めています。SDGsに設定された17の目標の中には、物流に大きく関係するものもいくつかあります。例えば、前述のプラスチックやCO2に関する問題、経済成長と働きがいを両立するという目標などは、物流業界にも大きく関係しています。これらの目標への物流業界団体としての対応や、企業や個人の取り組みをどう進めていくかも課題となっています。
物流業界が取り組むべき目標
では、物流業界は具体的にどういった目標に対して取り組むべきなのでしょうか。SDGsに盛り込まれた考え方や目標の中で、取り組むべき目標として次のようなものがあげられます。
サステナビリティ
持続可能な社会の実現のため、持続性のある業務遂行の方法を業界として考えていかなければなりません。これには、使用する機器や器具の原材料や企業としての継続性、消費されるエネルギーの問題も含まれます。梱包資材に関して、SDGs仕様への移行方法はこちらでもご紹介しております。
(関連記事:SDGs思考の梱包仕様化を成功させるポイント|株式会社トヨコン)
CO2排出量の抑制
トラック輸送を多用する日本の物流では、CO2排出量の問題は、力を入れて取り組まなければならない課題です。脱炭素社会の実現にはトラック輸送を減らす方法、または、トラックがCO2を排出する仕組みそのものを変える方法を考えていかなければなりません。これには運送業に携わる企業だけでなく、自動車メーカーも含めた意識の変化と取り組みも必要です。脱炭素社会の取り組みと企業の意識変化の必要性については、こちらでもご紹介しております。
(関連記事:SDGs迫られる企業のEX(Environmental Transformation)|株式会社トヨコン)
脱プラスチック
物流業界は、梱包資材としてプラスチックを大量に使用しています。脱プラスチックの実現のためには、こうした現状を変えていかなければなりません。しかし、食品包装を始めさまざまなものの包装として、プラスチックは実際に優秀な性質があります。
現在の物流は、プラスチックの性能によって支えられていると言っても過言ではありません。このような現状から、プラスチックを排除するのは、実現のハードルが非常に高い目標です。これを進めるためには、世界が足並みをそろえ、国内でも官民一体となった取り組みが必要です。脱プラスチックと国の取り組みについては、こちらで解説しております。
(関連記事:地球規模のプラスチック問題、その背景を探る。|株式会社トヨコン)
サーキュラーエコノミー
日本だけでなく、世界はこれまで大量生産・大量消費によって、経済を発展させてきました。しかし、こういった経済の仕組みでは、持続性がないことについて理解が深まり、持続可能な社会を目指す動きがSDGsの策定につながっています。
これまでの経済は、原料を投入して生産したものを消費したら廃棄する、という直線的な経済の仕組みです。しかし、今求められているのは、これを環として循環する経済の仕組みです。この仕組みをサーキュラーエコノミーと言います。
サーキュラーエコノミーでは、消費したものを再び別の形で利用したり、原料に戻して再生産したりすることで、廃棄物という概念そのものがない社会の実現をゴールとしています。このような循環の仕組みには、ものの運搬の仕組み整備も欠かせません。そういった意味でも、物流はサーキュラーエコノミーと深く関わっています。
プラスチック資源循環法
2022年4月から「プラスチック資源循環法」が施工されました。この中では、2030年までに達成するべき目標に対しての具体的なプロセスが示されています。プラスチック製品の設計時から環境配慮型に転換することや、これまで使い捨てされていたプラスチック製品をリデュースする仕組みの整備などが盛り込まれています。梱包資材を製造・販売する企業にとっても大きく関わる法律であり、内容を理解して順守する必要があります。
企業と働き方の変革
SDGsには、「経済成長と働きがいの両立」という目標も盛り込まれています。持続可能な社会を実現するためには、企業が利益を確保して、従業員が持続的に働いていける環境も必要という考えです。労働力不足が問題となっている運送業にとっても、これは重要な課題です。
企業の意識変革、DXの実現による効率化やロボット活用による労働力確保など、働き方の変革を進め、ワークライフバランスの実現や、働きがいの向上などを進めていく必要があります。
物流のSDGs実現に向けた取り組み事例
物流に関する多くの企業が、SDGs実現に向けた取り組みを進めています。
発泡プラスチック緩衝材を使わない新たな緩衝材
これまで緩衝材には、大量のプラスチックが使われてきました。例えば、精密機器を梱包する際には、機器が箱の中で揺れたり、衝撃を受けたりして破損することを防ぐため、発泡スチロール緩衝材が使われます。
トヨコンでは、これに替わるSDGsに対応した緩衝材として、ワッフルパッドをご提案しております。これは、段ボール材によって立体構造を形成し、精密重量物に対しても、良好な衝撃吸収性を持つ新しい緩衝材です。ほぼ100%のリサイクルが可能で、実際に95%以上の回収率を誇る段ボールを使用することで、循環型の物流環境実現に向けた一歩となります。ワッフルパッドについては、こちらで詳しくご紹介しております。
(関連記事:【SDGs思考の梱包資材】立体紙緩衝材”ワッフルパッド®”|株式会社トヨコン)
生分解性素材でプラスチック包装に変わる紙の袋
プラスチック素材は、気密性や耐油性、粉塵が出ないなどの特性があり、梱包素材として使用する際に優れたメリットがあります。このような優れた特性を、紙で再現できたらどうでしょうか。
紙で作られていれば、生分解性によって自然に還るため、プラスチックごみとして長期間残ることもなく、枯渇性原料を使う必要もありません。気密性・耐油性に優れ、紙粉が出にくい無塵性も持ちます。また、100%植物由来の素材で作られ、紙として通常のリサイクルが可能です。こういった、プラスチックに代わる紙素材の開発も進んでいます。
(関連記事:【SDGs思考の梱包資材】使い捨てプラスチック規制と新紙素材の可能性|株式会社トヨコン)
高いリサイクル率と持続可能性を兼ね備えたパレット
木材は持続可能な原材料ではありますが、樹木の成長速度に対して木材の使用量が上回れば、森林再生のサイクルから逸脱し持続は不可能になります。物流に関しては、木製パレットに多くの木材が使われています。世界の森林は減少を続けており、近年はウッドショックと呼ばれる世界的な木材不足も頻発するようになりました。このような問題に関して、木材を使用するパレットの製法を見直すことで、木材不足解消と森林保護につなげることができます。
その一例が段ボールパレットです。段ボールによってパレットを作ることで、リサイクル性が高く柔軟な設計が可能なパレットになります。また、プラスチックパレットから切り替えることで脱炭素の取り組みとしても有効です。ウッドショックと段ボールパレットについてはこちらでご紹介しております。
(関連記事:【SDGs思考の梱包資材】ウッドショックから考える輸送用パレット|株式会社トヨコン)
脱トラックによってCO2削減を進めるモーダルシフト
モーダルシフトは、トラック輸送を中心とした仕組みから、輸送力の高い鉄道や船を中心とした輸送体系へと切り替えることを言います。これにより、人材不足の解消や燃料コストの削減、CO2排出量の削減など、複数の物流課題を同時に改善が可能です。このモーダルシフトに力を入れているのが、日本通運です。日本通運ではモーダルシフトをSDGs戦略の大きな柱の1つとして推進しています。
エコカーへの転換と資源保護を同時進行
トラック輸送によるCO2排出量の問題を、根本から解決するために取り組んでいる物流企業では、エネルギー利用の効率化、再生可能エネルギーの導入に加え、使用する車両をエコカーへと代替することでCO2排出量の削減に大きく貢献しています。このような企業ごとの取り組みが積み重ねられることで、地球規模のCO2排出量が削減され、地球温暖化に歯止めをかけることにつながります。持続可能な社会を実現するため、日本国内の多くの物流企業がSDGsを意識した取り組みを進めています。
まとめ
物流は、包装材や輸送に関してSDGsと深く関わります。特にプラスチック素材の使用やリサイクル、持続性の高い素材への転換、輸送によるCO2排出量などは、物流全体を通しての大きな課題です。しかし、梱包材の見直しを通してコストダウンや効率化となる可能性もあり、チャンスとして考えることもできるのではないでしょうか。
SDGsの取り組みのきっかけや検討するにあたってのヒントとなる情報などを解説した、無料のe-book「SDGs思考の梱包資材」があります。ご検討の際にぜひご活用ください。
(関連ページ:お役立ち資料|「SDGs思考の梱包資材」の教科書 – 物流改善・梱包材のことなら | 株式会社トヨコン)
梱包の見直しや、コスト削減でお困りですか?
トヨコンの包装資材に関するサービスをこちらで紹介しています。ぜひご覧ください。
ご相談、お問い合わせはお気軽にどうぞ!
参考: