第1弾では、デジタルを活用した業務改善に挑戦した三田さん。第2弾では、「不適合ゼロ」を目指し、チームで改善を進めた蒲郡事業所201倉庫の権田さんと山本さんを紹介しました。
それぞれ異なる取り組みですが、二つの現場には共通していたことがあります。それが「上司の関わり方」です。
・現場へ足を運ぶ
・声をかける
・話を聞く
・目指す方向を示す
一つひとつは、特別なことではありません。しかし、こうした日々の関わり方が、現場で働く人が自ら考え、行動するための土台になっていました。
3部作の最後となる今回は、物流サービス部の乾部長と蒲郡事業所の照井課長に話を聞きました。現場が変わっていく過程で、上司はどのように現場と向き合っていたのでしょうか。
💡 この記事のポイント
・現場との関係づくりは、上司自身が現場へ足を運ぶことから始まる
・目標や新しい見方を示すことで、現場が自ら考え、改善するきっかけをつくる
・上司の役割は、現場が力を発揮しやすい環境をつくること
・「不適合ゼロ」への挑戦を、蒲郡事業所が目指す「品質と信頼」につなげる
──部下との距離感について、意識していることはありますか?
乾部長: 現場に顔を出すことは意識しています。まずは行くだけでもいいと思っていますし、顔を見せることで、「来てくれている」「見てくれている」と感じてもらえればと思います。ただ、「声をかけてもいいのかな」と迷うこともあります。本当はまんべんなく話したいと思っているんですけど、気を使いますよね。声をかけずにいた方がいいのかなとか、今はタイミングじゃないのかなとか、考えてしまうこともあります。
それでも、体調が悪そうな人や、少し気になる様子があれば、こちらから声をかけるようにしています。少しずつ話しやすくなっていけばいいかなと思っています。
照井課長:僕も顔色はよく見るようにしています。少ししんどそうだなとか、いつもと違うなとか。目が合ったときや、何か気になる様子があれば、こちらから声をかけます。仕事の話ではなくても、「最近どう?」くらいの感じで話すこともあります。
僕自身、最初は喋りにくいと言われることもあるんです。でも、実際に話していくと喋りやすいと言ってもらえることもあります。だから、そういう些細なコミュニケーションを続けて、話しやすい雰囲気をつくることは意識しています。やっぱり、こちらから行かないといけないですよね。
現場へ足を運ぶのは、コミュニケーションのためだけではありません。 実際の仕事を知ることも、二人が大切にしていることです。
──現場に足を運ぶことについて、どのように考えていますか?
乾部長:現場がどんなことをやっているのかを実際に見たうえで話したいと思っています。 「なんでこんなに不適合が多いのか」「減らせ」と言うのは簡単です。 でも、自分でも現場を見てみて、そこで思うことがあれば、それに対して話すことができる。
だから、まずは自分が現場を知りたい。 そういう意識で現場には足を運んできました。
照井課長: 僕も一緒です。 現場に行って初めて、「こんなにやっているんだ」と分かることもあります。困っていることも、ただ聞くだけでは分かりにくい部分があります。実際にそこへ出向いて、どんな現場なのかを自分の目で見たうえでないと、ちゃんとしたアドバイスもできないと思っています。
──現場からの相談を受けたとき、どのように向き合っていますか?
乾部長:「ちょっと話があります」と言ってくる時点で、その人にとっては優先度が高い話だと思っています。普段であれば、「忙しそうだからやめておこう」と感じることもあると思うんです。 それでも声をかけてくるということは、それを超えて伝えたいことがあるということ。 だからこそ、できるだけその場で話を聞くようにしています。
もちろん、自分の仕事にも優先順位はあります。ただ、それよりも「その人にとっての優先度」の方が大事だと考えています。
照井課長:現場は本当に一生懸命やっているので、その声を聞かないという選択肢はないと思っています。話を聞くかどうかを迷うというよりも、「聞く前提」でいることが大事だと感じています。
第1弾で紹介した、三田さんのデジタルを活用した業務改善。三田さんの挑戦を振り返ると、照井課長自身も最初から答えを持っていたわけではありませんでした。
──三田さんの挑戦には、どのように関わっていましたか?
照井課長:最初は僕も「一緒にやってみよう」という感じで始めました。僕自身も今の作業を変えたいという思いはあったので、最初の取っかかりとして一緒に入りました。ただ、やってみると、「自分にはちょっと向いていないな」というのも分かって(笑)。知ろうとはしたんですけど、正直、僕は苦手でしたね。
でも、三田さん自身には「今の作業を変えたい」という思いがあって、徐々に形になっていきました。出来上がっていく中で、本人も新しいことにチャレンジできるという嬉しさがあったと思います。できたものもすごくきれいなものができていましたし、そこはしっかり、常に「ありがとう」ということは伝えていました。
第2弾で紹介した、蒲郡事業所201倉庫の「不適合ゼロ」への取り組み。当時、蒲郡事業所では不適合が続き、社内で「不適合=蒲郡」と見られる状況がありました。そんな中で出たのが、乾部長の「不適合ゼロがブランディング」という考え方でした。
──「不適合ゼロがブランディング」という言葉は覚えていますか?
乾部長:もちろん覚えています。ただ、そんな言い方をしたかなという感覚もありますけどね。
照井課長:当時の現場では「ブランディング」という言葉自体が浸透していませんでした。僕自身、どちらかというと、「どうやって外に知ってもらうか」という方に意識が向いていました。でも、不適合の多さについて話し合ったときに、乾部長からその言葉が出て、「なるほど、そういう考え方もあるのか」と。そういう視点もあったんだ、というのは大きなきっかけでした。
そこから改めて過去の不適合を分析してみると、これは本当に減らさないといけないという意識が現場でも強くなっていきました。以前は不適合の対応は個人改善でしたが、不適合を共有して、原因を分析して、みんなで対策を考えるようになりました。みんなで話し合い、解決し、ルールを決めて守る。そうした形に変わっていったことが、一番大きかったと思います。
──現場の改善に、乾部長はどのように関わっていたのでしょうか?
乾部長:細かいところまで関与したわけではありません。変えたのは、目標設定の考え方だけです。それまでは「何件以内に抑える」という目標を立てていました。でも、それだと「その範囲に収めよう」という意識になりやすい。 今回は「ゼロを目指そう」としました。
目指すところが違えば、そこに向けて自分たちが何をやらないといけないのかを、自分たちで考えることができる。その結果が出たんじゃないかなと思っています。
照井課長:「何件以内」だと、1件出ても「次は気をつけよう」となってしまう部分があります。でもゼロを目指していると、1件出た時点で達成できなかったことになる。だから、「そこを直さないといけない」という考え方に変わっていったんだと思います。
──現場のみなさんについて、どのように感じていますか?
乾部長:もともと現場はしっかりやってくれていると思っていました。
照井課長:本当に一生懸命やっている現場だと思います。
──そうした現場に対して、上司として大切にしていることはありますか?
乾部長:みんなが働きやすい環境というか、力を発揮しやすいようにしてあげるのが、上の人の役割なのかなと思っています。僕自身、考え方はすごく変わりました。前は「なんでできないんだ」と思うこともありました。
でも今は、「できていないから指示する」というよりも、「どうすればできるか」を一緒に考えるようにしています。 できない理由があるのであれば、それを見つけて解決していく。その方が結果的に現場も動きやすくなると思っています。
──今後、蒲郡事業所をどのような現場にしていきたいですか?
照井課長:等級に関わらず、みんなに目標を持って仕事をしてもらいたいと思っています。目標を立てると、それを達成するために行動も変えなければいけない。行動が変わると、働き方も変わって、それがプラスの方向に向かっていくと思います。
一人ひとりの目標とともに、蒲郡事業所全体として「品質と信頼を預かる空間」というテーマでやっています。僕らはいろいろなものを売ったり、作業をしたりしていますが、根本にあるのは品質です。その品質があるから、信頼が得られる。
だから、このテーマをテーマだけにせず、「品質と信頼を預かるということは、どういう働き方をしなければいけないのか」というところまで、みんなに根付かせていきたいと思っています。
乾部長:自分たちがやっていることに、もう少し自信を持って、誇れるようになってほしいと思っています。日々お客様の品質にも関わっている。当たり前にやっていることかもしれないけれど、実はすごいことをやっているんだということを、もっと感じてほしいですね。
今回インタビューで見えてきたのは、何か特別な方法が現場を変えたわけではないということです。現場へ足を運び、仕事を知る。声を聞き、目指す方向を示す。そして、必要なときには支える。こうした日々の関わりの積み重ねが、現場が自ら考え、行動するための土台となっていました。
もちろん、現場を変えるのは上司だけではありません。実際に考え、行動し、改善を積み重ねていくのは現場です。だからこそ、上司がすべてを伝えるのではなく、現場が自ら動ける状態をつくる。現場と上司がそれぞれの目線から考え、より良い現場をつくるための取り組みを続けています。