はじめに
「201倉庫は、不適合ゼロを目指すことがブランディング。」この一言が、現場の意識を変える大きなきっかけとなりました。 トヨコンの物流サービス部 蒲郡事業所 201倉庫では、主任の権田さんと山本さんが中心となり、「不適合ゼロ」を目指した取り組みが始まりました。日々、多くの製品を取り扱う倉庫では、わずかなズレや見落としといったミスをゼロにすることは容易ではありません。 これは、一人ひとりが「ブランディングとは何か」を考え、自分たちの作業や取り組みの中で、不適合ゼロをめざして行動を変えていった過程を追ったストーリーです。
1. 不適合49件からの再スタート
2023年度当時、201倉庫では上期20件・下期29件、合計49件の不適合が発生していました。多い月には1か月で10件発生することもあり、トヨコン全拠点の中でも不適合件数は最下位という状況でした。
「このままではいけない」
そう感じた私たちは、都度作業方法の見直しを行いながら改善を試みました。
しかし、思うような成果は得られず、不適合が再び発生してしまう状況が続いていました。
改善につながらなかった原因は“周知不足”にありました。該当した人だけが改善対応を行っても、他のメンバーへ共有されず、誰かが同じ作業を手伝うと、改善内容を知らないまま同じミスを繰り返してしまう。まさに「わかっている人だけが直して、全体には伝わらない」状態が続いていたのです。
2. きっかけは一言。「ブランディング=不適合ゼロ」
もともと物流サービス部では、毎年「6S・品質・改善」を目標項目として掲げていました。2024年度からは新たに「ブランディング」が追加されましたが、当初は「ブランディングとは何をすればいいのか」が明確でなく、上期は手探りのままでした。
転機となったのは、中間検討会。乾部長から伝えられた言葉が、現場の意識を大きく変えました。
「201倉庫は、不適合ゼロを目指すことがブランディングだよ」
それまで“ブランディング”という言葉は、どこか遠い存在でした。しかしこの瞬間 「それを自分たちの目標にしよう」と、権田さんと山本さんが話し合い、倉庫メンバー全員を集めて「201倉庫は、不適合ゼロを目指します」と宣言しました。
▲権田さんと山本さん
3. 「ルールの統一」と「見える化」で変わった現場
これまでは、不適合が発生してもなんとなくのミーティングで終わってしまうことが多く、「次からはこうしましょう」という声掛けだけで具体的な改善にはつながっていませんでした。 そこでまず取り組んだのが、「不適合の数を見える化すること」と「ルールの明確化」でした。倉庫内へホワイトボードを設置し、毎日の不適合件数を全員で共有できるようにしました。 さらに、それまで曖昧だったピッキングのルールを整理。人によって手順が異なっていたため、ここが一番の間違いの原因ではないかと気づいたのです。紙面に記載された順番通りに一点ずつ取り、最後に数量を確認するというルールを設定しました。それが良かったんです。やってみたら劇的に変わった。 さらに、改善を根づかせるため、最初のうちは2週間に1回、権田さんと山本さんが倉庫内を見回るようにしました。

▲不適合数の見える化ホワイトボード
4. 成果とチームの変化
2024年度の上期までは、ルールを決めても長く続かず、「また同じミスが出てしまった」という繰り返しが続いていました。しかし、中間検討会をきっかけに、下期からは「ルールを守る」という意識がチーム全体に根づいていきました。
2024年度の不適合件数は、上期21件でしたが、下期では8件へと大きく減少。年間では合計29件となり、着実な改善が見られました。特に下期は、目標値を16件に設定していましたが、実際の結果はその半分の8件にまで削減。目標の半分で達成し、結果として達成率200%という成果を上げました。
単なる数値改善ではなく、チーム全員がルールを守り、“ゼロに近づけるために考えて動く”姿勢が根づいたことが、この結果を生んだ最大の要因です。 また、話し合いの中で出た一言
「課長と部長を喜ばせてあげよう!」
この言葉が、チームの空気を変えるきっかけになりました。
「これまではがっかりさせてばかりだったけど、今度は喜んでもらおう」と、メンバー全員が前向きに取り組む姿勢へと変化していったのです。 こうして、「ルールを決める」「不適合を見える化する」という2つの取り組みが、現場に大きな変化をもたらしました。それは“やらされる改善”ではなく、“自分たちでつくる改善”へと進化した瞬間。そして、品質・改善・ブランディング――すべてが「不適合ゼロ」という共通の目標でつながっているということでした。
5. 現場から生まれるブランディング
201倉庫の倉庫業務は3人体制ですが、業務が多忙なときは、他業務をしているメンバーから応援が入ることもあります。最初のころは戸惑いもありましたが、今では自然に声を掛け合い、助け合う文化ができました。 「部長も課長も定期的に顔をだしてくれて、声やアドバイスをかけてくれる。見てくれているというだけで、がんばろうと思えるんです」 そんな日々の関りが、チームに安心感と一体感を生み出しています。「誰かが見てくれている」という感覚は、小さなミスにも気づける責任の芽を育てていきました。
そして今、201倉庫では「不適合ゼロ」がただの目標ではなく、ブランディングとして根付き始めています。「不適合ゼロこそブランディング」が、今では私たちの合言葉です。品質・改善・6Sといった活動の先に、「自分たちの行動がトヨコンの信頼をつくっている」「ブランディングは特別なことではなく、当たり前のことを全員で守ることだと思うようになりました」 その当たり前を守り続けることこそ、現場から生まれるトヨコンのブランディングを形づくる日々の力です。

