ソーシャルメディアの発達とともに、日本でも広がりを見せている「シェアリングエコノミー」というサービスの形。大手企業もこの新しいサービス形態に乗り出し注目を集めています。今回はシェアリングエコノミーとはどのようなものかどういったメリットがあるのかご紹介します。
近年、「所有する」ことを重視する考え方から「使う」ことを重視する考え方へと、ものの持ち方・使い方の考え方を変える人が増えつつあります。
従来は、乗り物や住居などは、所有することに価値を感じる人が多く、家具や服などを借りて使う場面は限られていました。しかし今、こういった資産について個人で購入して所有するのではなく、「必要なときに借りて利用したり、他人と共有したりすればいい」と考える人が増えているのです。
また、人を乗せて移動する配車サービスや、ものを届ける配達サービスなどは、特定の業者だけが行うものと考えられてきました。しかし、これも同じようなサービスを提供できる人と、サービスを求めている人がいれば、誰でも個人間でやり取りが可能という考え方が生まれています。
このような、ものやサービスを個人間で貸したり共有したりすること、またはそれを仲介するサービスがシェアリングサービスと呼ばれ、注目を集めているのです。このシェアリングサービスが発展・普及したきっかけには、インターネット、特にソーシャルメディアが大きく関わっています。ソーシャルメディアを通して、ものやサービスを求めている人と、それを提供できる人とが結びつく仕組みがシェアリングエコノミーを支えています。
それでは、シェアリングエコノミーが普及するとどのような事が起こるのでしょう。
シェアリングサービスによって、次のようなことが可能になります。
メリットばかりのように見えるシェアリングエコノミーですが、解決しなくてはならない課題やデメリットもあります。
さまざまな分野ですでにシェアリングエコノミーは取り入れられています。ここで、その一部をご紹介します。
シェアリングエコノミーはここから始まったともいえるほど初期からあるのが、このAirbnb(エアービーアンドビー)です。個人が所有する空き部屋や別荘を利用して、民泊を仲介するサービスで、すでに世界190カ国以上に普及しています。低価格で宿泊できるため人気があり、多くの人が部屋の貸し借りをしています。
CaFoRe(カフォレ)は、カーシェアリングを仲介するサービスです。借りる人は車を必要とするときだけ貸す人からシェアしてもらうことができ、貸す人は使わないときに車をシェアすることで、収入を得ることができます。年々、車を所有する人が減っているといわれる現代では、今後さらに注目される可能性のある車のシェアリングエコノミーです。
個人間のカーシェアリングが普及する一方で、大手自動車メーカーがカーシェアリングに乗り出している例もあります。カーシェアリングサービスをすでに運営しているパーク24とトヨタ自動車は、協同で新サービスを開始するため合意しました。今までのような「車を販売する」のではなく、「車を利用するサービスを提供する」ようなビジネスモデルを新たに始めようとしています。
また、トヨタが始めるもう1つの新しいサービスが、月額制車乗り換えサービスのKINTO(キント)です。一定の月額を払えば、利用シーンに合う車種を選び、乗り換えながら借りることができる仕組みです。メーカーによる車のサブスクリプションモデル(定額制サービス)は、業界でも初の取り組みとして注目されています。
メーカーと多数の個人が車をシェアするこの仕組みもシェアリングエコノミーの形といえるでしょう。
物流の世界にもシェアリングエコノミーが始まっています。富士運輸・トラボックス・イーソーコ・NTTドコモの4社が協力し、物流のプラットフォームとして開始したサービスが、docomap JAPANです。
このサービスは、物流におけるトラック輸送の効率化を目指しています。荷物を積まないまま走る空車が、どこにいるのかをGoogle Map上にリアルタイムで表示、公開してくれるサービスです。これにより、運送業者は車両をシェアし、空車のまま走るトラックを減らして効率よく荷物を運ぶことができます。昨今の運送業におけるドライバー不足を解消する一手として注目されています。
SBSロジコムが提供する物流シェアリングプラットフォームが、iGOQ(イゴーク)です。空車情報や運行状況を集約し、スポット貨物と空き車両のマッチングを提供するサービスです。どのような形のトラックがどこで空車となっているかをリアルタイムに把握し、即座に発注が可能です。
こちらも物流の効率化と資源の有効活用を目指す物流版のシェアリングエコノミーサービスです。
このように、シェアリングエコノミーは多くの分野ですでに広がり始めています。物流業界においても、さらに新しい発想のシェアリングエコノミーサービスが生み出され、物流の仕組みを変えていくかもしれません。
参考: