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【梱包道場】何度でも生まれ変わる注目素材パルプモールド

【梱包道場】何度でも生まれ変わる注目素材パルプモールド

【梱包道場】は、トヨコン社員・木村ラマヌジャンが、設計や素材など、梱包の基本的な知識について学んでいくシリーズです。
 

~ある日のトヨコン・豊川営業所での昼休み~

K先輩「おーいラマヌジャン、昼めしどこか食べに行かないか?」

ラマヌジャン「わあ! 先輩のお…」

K先輩「おごりとはいってないぞ!」

ラマヌジャン「……いいです、お弁当作ってきたのでこれ食べます」

K先輩「そうか。ん? なんだその弁当? 白米と卵……?」

ラマヌジャン「はい! 僕の手作り! TKGBです!」

K先輩「まさか、たまご(T)かけ(K)ごはん(G)べんとう(B)……?」

ラマヌジャン「その通りです! しかもブランド卵ですよ!」

K先輩「(手作り……)あ、ああ、うまそうだな」

ラマヌジャン「ところで先輩、この卵の入れ物、あまり見たことがない容器ですよね」

K先輩「ああ、最近じゃプラ製のパックも多いが、そのパルプモールドも優れた容器なんだぞ」

ラマヌジャン「パルプ……なんですか? 魔法の呪文みたいですね」

K先輩「そうか、知らなかったのか。じゃあ、今日はこのパルプモールドの魅力を教えるぞ」

パルプモールドとは

パルプモールドは、紙を原料とする立体成型品で緩衝材によく使われています。卵パックや果物トレーに使われているザラザラした手触りの少し柔らかい素材が、パルプモールドです。

原料となるのは、新聞や雑誌、段ボールや牛乳パックなど、古紙を集めて水に溶かしたもの。これを金網ですき、乾燥することで成形します。

紙を原料とするため、通気性や保水性など、紙の特徴をそのまま持っています。また、古紙を再資源化でき、燃やしても有害な物質を出さず、もし放置されても、分解されて自然に還ります。このように、自然環境への負荷がない点から、近年再び注目されています。

紙がパルプモールドに生まれ変わるまで

「紙を水で溶かして乾燥して固める」と聞くと、理科の実験でやった紙の手作り工程が思い浮かぶかもしれません。実際に、パルプモールドは、最先端の技術を使い、同じような工程で紙を再生する技術です。それでは、具体的な製法を原料の製造段階から見ていきましょう。

  1. 集めた古紙を性質が似ている種類ごとに分類します。

  2. 「パルパー」と呼ばれる大きなミキサーに古紙と水を入れ、かき混ぜることで解離・溶解させ、どろどろの原液を作ります。

  3. 「スクリーン」という機械で、古紙を縛っていたヒモや段ボールに使われていた金具、ビニールコートが施され溶けない紙などを原料から取り除きます。

  4. こうしてできた原料を成形機に投入します。

  5. 成形機で成形します。このとき、2種類の成形法があります。
  • 「ソフトモールド」
    紙をすきあげて乾燥する製法。紙の製法と同じ手法です。厚みのある製品には向いておらず、1~3mm程度の厚みに適しています。卵や青果物のトレー、工業品の緩衝材に使われます。

  • 「ハードモールド」
    高濃度に調整した原料を使用し、金型によってプレス成形することで、脱水と成形を同時に行う製法です。10mm以上の厚さにも対応でき、重量物の固定材に使われます。

    6. 成形された製品を乾燥機にかけます。

    7. 完成した製品の品質を確認し、出荷します。

このようにしてパルプモールドはできあがります。 

ラマヌジャン「へえ~! こうやって紙をリサイクルして作っているんですね!」

K先輩「ああ、だから環境に優しい素材として再注目され、また需要が増えているんだ」

ラマヌジャン「なるほど! でも卵や果物のトレーってそんなに需要が大きく変動するものじゃないですよね?」

K先輩「その2つの用途のイメージが強いかもしれないが、パルプモールドの用途はそれだけじゃないぞ」

パルプモールドはこんなところで使われている

パルプモールドは従来の用途に加え、使われる場面が増えています。最近では、パルプモールドの性質を活かしたインテリアも登場し、緩衝材としてだけでなく新たな利用シーンを開拓しています。

  • 卵パック
  • フルーツトレイ
  • 家電の包装用緩衝材
  • 工業用部品の緩衝材
  • パレット
  • ランプシェード
  • 植木鉢

パルプモールドの特徴

このように、パルプモールドがさまざまな場所で使われているのには原材料や成形法による次のようなメリットがあるからです。

資源を有効活用している

古紙の再資源化により、地球上の資源を有効活用しています。石油原料も使いません。

使用後も再利用できる

古紙を溶かし成形したパルプモールドは、また溶かして別の形のパルプモールドへと再利用できます。マテリアルリサイクルの輪が成り立ちます。

自然に還る

紙を溶かして作ったパルプモールドは、食物繊維を固めたものと表現することができます。微生物に分解され自然に還るため、自然を汚しません。日々消費される卵パックが、パルプモールドによって作られることは、環境面で多くのメリットがあります。

優れた通気性と保水性

植物の繊維によってできているパルプモールドは、優れた通気性と保水性を持ちます。この性質を活かし、青果物の梱包に使われています。

ほどよい柔軟性とクッション性

パルプモールドは成形された形状を保ちながら、ほどよい柔軟性を持ち、さらにクッション性もあります。緩衝材として適しています。

成形の自由度が高い

型によってさまざまな形状に成形することが可能です。これにより、電気製品や精密部品にフィットする緩衝材を作ることができます。

コスト削減

古紙をリサイクルして作るため、材料コストを削減できます。

EU圏での使用

EU圏では、土壌や地下水を汚染する恐れのある特定物質の使用が禁止されています。パルプモールドは、製造過程で接着剤や化学物質を使うことがなく、有害な物質が含まれないため、EU圏でも安心して使用できます。また、リサイクルやマイクロプラスチック問題に関心の高いEU圏で、古紙をリサイクルしたパルプモールドは歓迎される材料と言えるでしょう。

一方で、次のような点には注意が必要です。

水濡れによる崩壊

溶かした古紙を乾燥して作ったパルプモールドは、濡れると崩壊してしまうことがあります。ただし、撥水加工もできるため、水濡れの可能性がある用途では、あらかじめ撥水加工が施されて使用されています。

想定外の方向からの加圧

パルプモールドはCADによって設計された形によって強度を保ちます。しかし、想定していない方向からの加圧には弱い一面もあります。その場合、割れや折れが発生してしまいます。

復元性は低い

クッション性があるとはいっても、それほど復元性は高くありません。一度凹むとそのまま戻らないこともあります。

重量

食物繊維を固めたパルプモールドは、発泡スチロールに比べると重くなります。また吸湿により、さらに重量が増加します。

K先輩「以上が、パルプモールドの特徴だ。どうだ? 意外なところでも使われているだろう?」

ラマヌジャン「ランプシェードなんかもあるのはびっくりしました! 確かに紙って光を程よく通すし、ザラザラなパルプモールドはすごくきれいなランプシェードになりそうですね(もぐもぐ)」

K先輩「そして環境負荷の低さ、これが再注目されている理由なんだ。」

ラマヌジャン「この卵パックにもそんなメリットが詰め込まれてたんですね!(もぐもぐ)ふう、ごちそうさまでした。先輩の説明聞きながら食べるTKGBは最高でした!」

K先輩「あああっ! 説明に夢中で昼めし行くの忘れてた!」

ラマヌジャン「もう昼休み終わりますよ?」

K先輩「ラマヌジャン! 卵とご飯わけてくれー!」

ラマヌジャン「もう全部食べちゃいましたよー!」

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