梱包材入門【段ボール編】
段ボールは梱包材として大量に使われている素材です。今や段ボールなしでは物流が成り立たないと言えるほど、ものを輸送するために欠かせない存在です。梱包材の基礎中の基礎とも言える段ボールについて、あらためて詳しくみていきましょう。
段ボールの誕生から進化まで
段ボールはどのように誕生し、どういった進化を遂げて今のような物流の中心的存在へとなってきたのでしょうか。
段ボールが誕生したのは、1856年のイギリスです。当時はシルクハットが流行し、男性の多くが愛用していました。シルクハットは中が蒸れやすいという難点があり、これを解消するために波状に折った厚紙を内側に取り付ける工夫がされました。この波状の厚紙は通気性とクッション性を両立でき、急激に人気となり普及しました。これが段ボールの始まりです。
その後、1870年代には電球が発明され、1880年代から普及していきました。これに合わせ、段ボールのクッション性に注目が集まります。ガラス製品やランプ製品の輸送のため、段ボールが梱包材として使用されるようになりました。
製法としては、1874年には片面段ボールが、1882年には両面段ボールが、1894年には段ボール箱が開発されます。これらはアメリカを中心に普及していきました。日本では、1909年にレンゴーの創始者井上貞次郎によって、綿織り機をベースに考案された段ボール製造機が発明されます。ボール紙に段をつけたことから段ボールと命名され、井上貞次郎は「国産段ボールの父」とも呼ばれています。ちなみに、段ボールは日本で作られた用語です。英語ではcardboardまたはcorrugated boardといいます。
国産段ボールの開発から1年後、1910年から世界は第一次世界大戦へと突入してきます。資材不足の影響により、木箱から段ボール箱への転換が急速に進み、1930年代まで用途は広がり続けました。しかし、第2次世界対戦によって国内の段ボール工場の大半が消失、段ボール生産は低迷期に入ります。一時衰退した段ボールの生産ですが、戦後の復興において再び段ボール箱が注目されると、高度経済成長の波に合わせ市場は急成長しました。オイルショックやバブル崩壊では一時的に落ち込むものの、安定した伸びを続け、2000年以降はECの普及によってさらに需要が増加します。
2010年代後半からは、プラスチック使用量を減らす取り組みが進んだことで、箱としての用途だけでなくさまざまな分野で活用が考えられるようになりました。リサイクル性が高く、製造面でも省エネが実現できる段ボールの注目度はさらに高まっています。
段ボールの各部の名称や用語
段ボールについて次のような用語が使われます。
中芯
段ボールは波型に成形した厚紙を2枚の厚紙で挟み込むように貼り合わせて作られています。この中心にある波型の厚紙が中芯です。中芯の波型の形状により、段ボールは目方向での強度を確保できます。
ライナ
中芯を挟み込んでいる平面の厚紙がライナです。2枚のライナは表ライナ・裏ライナと呼び分けられることもあります。使用する材質によって強度が異なります。また、耐水性や撥水性、耐油性などの機能性を持たせた特殊ライナもあります。
ピッチ
中芯の波の大きさです。中芯とライナが接する部分の間隔で表します。基本的にピッチが大きいほど段ボールは厚くなり、小さいほど薄くなります。
フルート
フルート(flute)は丸溝ひだを意味し中芯の波型の形を表す言葉ですが、段ボールの規格用語として定着しています。段の高さをいくつかの種類に分けて規格化し、段ボールの構造を表す用語として使われます。
目方向
段ボールは中芯の波の方向によって目方向が決まります。段ボールを断面からのぞいて、向こう側が見える方向が目方向です。段ボールのサイズを表す場合は、目方向が幅となります。
段ボールは折れやすい方向と折れにくい方向がありますが、目方向=幅を表す直線を引いたとき、この直線に沿っては折れやすく、直線を折り曲げる方向には強度が出ます。このときの折り曲げにくい方向は流れ方向といいます。
段ボールの構造上の種類
段ボールは次のように種類分けされます。
Aフルート(シングルフルート)
約5mmの一般的な厚みのある段ボールで、外装箱として広く使われています。曲げやすくライナを剥がしやすいため、加工性が高く汎用性があります。
Bフルート
約3mmの厚さの段ボールで、大手通販会社の段ボールで使われています。緩衝性はAフルートに劣りますが、平面圧力に対しては強度があります。
Eフルート
約1.5mmの厚みの段ボールで、マイクロフルートと呼ばれる種類に分類されます。紙に比べると厚みと強度、緩衝性があるため内装箱や個装箱に使われます。また、ハサミでも切断可能なこともあり段ボールクラフトにも使われます。印刷性が高いという特性があります。
Gフルート
約0.9mmの厚みで、マイクロフルートに分類されます。厚紙のように見え、段ボールだと認識されないこともあります。オフセット印刷が可能で、化粧箱としてよく使われます。
ABフルート(ダブルフルート)
AフルートとBフルートを貼り合わせて2層構造にしたもので、約8mmの厚みがあります。ダブルフルート、または複面段ボールとも呼ばれます。衝撃吸収性と破裂強度に優れ、折り曲げた場合の反発が強く形状復元性があります。重量物の梱包によく使われます。
AAフルート(2層強化段ボール)
Aフルートを2層にしたもので、約10mmの厚みがあります。2層強化段ボール、バイウォールと呼ばれることもあります。高い強度があり、重量物の梱包や輸出梱包に適しています。
AAAフルート(3層強化段ボール)
Aフルートを3層にしたもので、約15mmの厚みがあります。3層強化段ボール、トライウォールとも呼ばれます。非常に高い強度があり、重量物梱包や輸出梱包のほか、段ボール家具やディスプレイにも使われます。
段ボールのメリット
段ボールは有用性が高く、従来から物流を中心に広く使われてきました。近年では環境配慮や持続性についての関心が高まり、別の面からも再注目されています。段ボールはどういったメリットから注目されているのでしょうか。
リサイクル性が高くCO2排出量が小さい
段ボールの原料となる厚紙は、主に間伐材や計画植林の木材から作られます。自然にダメージを与えずに作ることができ、環境負荷が低い素材です。さらに、原料は95%以上がリサイクルしたものであり、原料から消費までをほぼ循環させることができています。段ボールは、人工的な素材の中では数少ない持続可能な梱包材の代表格と言えます。
オーダーメイドが容易
段ボールは厚みや構造が選択でき、必要強度を満たす設計が可能です。また、さまざまなサイズに加工ができ、折り曲げる部分の加工や切れ目を入れることも可能です。さまざまなオーダーメイドが容易という特性は、段ボールが広い分野で使われる理由の1つです。
梱包の安全性が高い
段ボールによって梱包のための箱や緩衝材を作る場合、寸法と商品固定方法についても専用設計がしやすく、最適寸法にできます。適切な寸法で確実に固定でき、緩衝性が高く商品を安全に保てます。
保温性・保冷性が高い
中空構造の段ボールは保温・断熱性能が高いという性質もあります。冷凍食品・チルド食品の梱包にも適しています。
印刷が容易
紙でできている段ボールは印刷が容易です。自社ロゴを入れて宣伝効果を高めたり、店頭陳列の際の販促効果を高めたりできます。
保管場所を取らない
段ボールケースは折りたたんだ状態で保管できるため、保管場所をとりません。物流にとって保管スペースの効率化は重要ですが、副資材の保管スペースを小さくできることは物流全体の効率化にとって大きな効果があります。
自然に還る素材
段ボールは天然素材であるため、自然界の作用によって分解されます。万が一、人の管理外に流出し放置された場合にも、最終的に土に還るため自然を汚さず、負の遺産になりません。
段ボールの用途
このような多くのメリットを持つ段ボールは、さまざまな用途で使われています。
段ボールシート
段ボールを板状のまま使用します。梱包の際の緩衝材や仕切り、段ボール箱の底面補強、パレットへの下敷きなど、幅広く使われます。
段ボール箱
「段ボール」といったときに、段ボール箱のことを指す場合も多いのではないでしょうか。段ボールの最も多い用途が箱としての使い方です。段ボールが普及したのは、箱状にした場合の強度が高いというのも大きな理由です。通気性と緩衝性があり、食品から工業品まで幅広い分野での梱包ケースとして使われています。
巻き段ボール・ウェーブ緩衝材
ライナのない中芯だけの状態は、柔軟性がありつつ緩衝性があります。ガラス製品や瓶、電球などを包むための梱包材として使われています。
角あて・固定材
段ボールは強度を出すこともでき、電化製品や精密機器を梱包する際の角あてや固定材としても使われます。また、重量物をクレーンで吊り上げる際に、ワイヤーロープやスリングベルトが吊り荷に擦れて傷つくのを防止するための角あてとしても使われます。
段ボールパレット
段ボールは目方向を90度変えて重ね合わせることで、どの方向にも折れにくい強度を出すことができます。軽量で強度があり、低コストで作れてリサイクル性も高い段ボールパレットの普及が進んでいます。
パーテーション
段ボールは軽量で加工も容易なことから、パーテーションとしても使われています。オフィスで机ごとに仕切りを設ける際にも使われることが多くなっています。
災害時の避難所用ベッド
災害時発生時の避難所で使用するためのベッドとして、段ボール製のベッドが普及しています。組み立てが容易で折りたたんで収納でき、緊急時への備えとして適しています。
インテリアや生活用品
段ボールの持つ素朴な質感は、見せる収納としても広く使われています。室内の小物収納や子ども部屋の収納としても人気です。段ボールは工作の材料としても長く使われてきていますが、さまざまな形を作り出す段ボールアートという文化も生まれています。また、猫の爪とぎやコンポストの容器など、段ボールはあらゆる分野で使われています。
活用分野が広がる段ボールに再注目
段ボールは保温性や緩衝性が高く多くのメリットがあり、広く使われてきました。近年では原料の環境負荷の低さ、リサイクル性の高さ、CO2排出量の抑制、自然に還る性質などが注目され、さらに有能な素材として活用分野を広げています。
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