突然ですが、皆さんは「プチプチ」を何と呼んでいますか?
おそらく多くの方が、そのまま「プチプチ」と呼んでいるんじゃないでしょうか。でも実は「プチプチ」って商品名なんです。正式には「気泡緩衝材」といいます。
同じように、結束バンドのことを「インシュロック」と呼んだり、絆創膏のことを「バンドエイド」と呼んだり。普段何気なく使っている名前が、実は特定の企業の商品名だったということは結構あります。
細かいことなので、どっちでもいいやと思うかもしれませんが、我々のような商社の立ち位置では、各メーカーさんともお付き合いがあるので、そこは気を遣うところなんですね。
もし気付かなかったり、間違って他社品の名前で話をしたりしたとき、メーカーの営業さんもそこは察して怒るとかはまずないですけど、他社製品の名前で自社製品を呼ばれたら嫌じゃないですか。サラリとメーカーごとに名前を使い分けていたり、普段から一般名称で統一して話したりしている人を見ると、私は心の中で「こやつ……プロか」と勝手に思っています。
というわけで、世の中にはいろんなメーカーの商品があるのに、なぜか特定の会社の商品名が、その物自体の名前として使われている。今回は、そんな商品名と物の名前の関係について調べてみました。
意外と多い、商品名で呼んでいるもの
まずは身近な例をいくつか挙げてみます。
| よく使われる商品名 | 一般名称 |
|---|---|
| プチプチ | 気泡緩衝材 |
| インシュロック | 結束バンド |
| バンドエイド | 絆創膏 |
| ホッチキス | ステープラー |
| テプラ | ラベルライター |
| ウォシュレット | 温水洗浄便座 |
| セロテープ | セロハン粘着テープ |
こうして並べてみると、結構ありますね。
ちなみに、こうした名前がすべて同じ理由で広まったわけではありません。長年の販売実績だったり、広告の影響だったり、その商品が身近な存在だったり。ただ、共通しているのは、一般名称よりも商品名の方が人々の記憶に残っている場合があるということです。
「気泡緩衝材」と言うより、「プチプチ」の方が圧倒的に伝わりやすいですしね。
プチプチは、ついに会社の名前になった
プチプチは、もともと川上産業株式会社が販売していた気泡緩衝材の商品名です。実は、最初から「プチプチ」という名前だったわけではなく、当初は「エア・バック」という名前で販売されていたそうです。
ところが、お客様に商品を説明するときには「あのプチプチとつぶす緩衝材です」と伝えることが多かったのだとか。それなら、いっそのこと商品名を「プチプチ」にしてしまおう、ということで名前を変更したそうです。
確かに「エア・バック」と言われてもどんな商品かピンときませんが、「プチプチ」なら、あの見た目や指でつぶしたときの感触まで想像できます。
そして、弊社メルマガで以前にも書きましたが、2026年10月1日に川上産業株式会社は**「プチプチ株式会社」へ社名を変更しました。** 商品名として広まった言葉が、今度は会社そのものの名前になったわけです。名実ともに企業を代表するブランドへと成長したわけですね。
ちなみに「プチプチ」は、現在も同社の登録商標です。
日本でだけ有名になった「インシュロック」
続いては、結束バンドの話。
電気配線をまとめたり、荷物を固定したりするときに使う、あの樹脂製のバンドです。これを「インシュロック」と呼ぶ人も多いと思います。実は「インシュロック」は、ヘラマンタイトン株式会社の登録商標です。
同社の公式サイトによると、もともとはイギリスのグループ会社で使われていたブランド名で、日本でも輸入販売時からそのまま使っていたそうです。その後、日本国内での生産が始まっても名前は変わらず、次第に結束バンドの代名詞として定着していきました。
面白いのは、本国イギリスでは使われなくなったブランド名が、日本では広く知られる名前になったということ。ちなみに、イギリスでは一般的に「cable tie(ケーブルタイ)」と呼ばれています。
生まれ故郷では使われなくなった商品名が、遠く離れた日本では今も現役。同じ商品でも、国によって名前の定着の仕方が違うんですね。そして厳密には「インシュロック」は配線資材全体のブランド名で、結束バンドを指すのは「インシュロックタイ」だそうです。……この違いは、私も今回初めて知りました。
絆創膏の呼び方で出身地がわかる?
さらに面白いのが、絆創膏です。
「バンドエイド」と呼ぶ人もいれば、「カットバン」「サビオ」「リバテープ」と呼ぶ人もいますよね。実はこれ、地域によって呼び方に違いがあるそうです。
阿蘇製薬株式会社が公開している「ばんそうこうの呼び方マップ」によると、例えば関東地方では「バンドエイド」、東北地方では「カットバン」、北海道や広島県などでは「サビオ」と呼ぶ人が比較的多いのだとか。
もちろん、同じ地域でも人によって呼び方は違います。ただ、興味深いのは、これらがもともと別々の会社の商品名だということ。つまり、地域ごとに広まった商品が違ったため、その商品名が絆創膏そのものの呼び名として残った可能性があるわけです。
もはや商品の名前というより、方言みたいなものですね。
ちなみに、サビオは2002年に一度販売を終了していますが、2020年に復活しています。販売されていない期間があっても、名前だけは人々の記憶に残っていたというのは強烈なブランド力ですね。
商品名が物の名前になるのは、企業にとって成功なのか?
商品名が一般名称のように使われるというのは、商品販売にとって非常に良いことです。マーケティング的には大勝利に思えます。自社の商品名を誰もが知っていて、しかも日常会話で使ってくれる。広告宣伝という意味では、これほど強いこともなかなかありません。
ただ、ちょっと不思議な現象も起こりそうです。
例えば、仮にトヨコンの「エアークイック(空気緩衝材製造機)」がものすごく有名になって、メーカーを問わず空気緩衝材製造機のことを「エアークイック」と呼ぶようになったとします。
これはブランドとして大成功ですよね。でも、ここでちょっと気になることがあります。
みんなが「エアークイック」という名前を知っていても、それがトヨコンの商品名だと知っているとは限らないわけなんですね。他社製の機械を見ても「エアークイック」、別のメーカーの商品を買っても「エアークイック」。
そうなると、商品名は広まっているのに、その名前がどこの会社のものなのかは知られていないという、なんとも不思議な状態が生まれる可能性があるわけです。
せっかく自社の商品名が広まったのに、他社製品まで同じ名前で呼ばれているとしたら、企業としては少し複雑な気持ちかもしれませんね。
さらに、こうした商品名の中には登録商標も多く含まれています。一般名称のように使われていたとしても、誰もが自由に商品名として使ってよいというわけではありません。企業にとっては、名前を広めることだけでなく、その名前と自社のブランドを結びつけておくことも大切なのかもしれません。
名前を決めるのは企業。でも、広めるのは消費者。
今回いろいろ調べていて思ったのは、商品名って企業が決めるものですが、その名前が世の中でどう使われるかまでは、企業が決められないんだなということです。
「プチプチ」のように、実際にお客様が使っていた言葉を商品名にしたケースもあれば、「インシュロック」のように、本国では使われなくなった名前が日本で定着したケースもあります。そして「バンドエイド」のように、地域によって違う商品名が定着することもある。
結局、商品名が物の名前として広まるのは、企業の宣伝だけでなく、使う人たちの生活の中でその名前が選ばれ続けてきた結果なのかもしれません。そう考えると、商品名が一般名称のようになるというのは、ある意味、究極のブランド認知と言えますね。
ただ、名前が広まるほど、それが特定の企業の商品名だという認識は薄れていくこともある。
誰もが名前を知っている。でも、その名前が誰のものなのかは知らない。
ブランドを広めたい企業にとって、これは成功なのか、それとも新たな課題なのか。
そんなことを考えつつ、どうやったらメルマガからの問い合わせ増えるんやろねーと俗な課題に向き合って今日はおしまい。
つづく
参考にした記事・サイト
- プチプチ株式会社|社名変更について
2026年10月1日の社名変更とブランドに対する考え方 - 日本ネーミング大賞2023|プチプチ
「エア・バック」から「プチプチ」への商品名変更の由来 - ヘラマンタイトン株式会社|結束バンドのFAQ
インシュロックの商標と名称の由来、英国と日本での違い - 阿蘇製薬株式会社|ばんそうこうの呼び方マップ
絆創膏の地域別の呼び名とその背景 - 阿蘇製薬株式会社|サビオばんそうこう
サビオのブランド復活について
※本文中の商標名は、それぞれの権利者に帰属します。商品名の一般的な使用状況と、商標としての法的な扱いは区別しています。