「ジャストインタイム(JIT)」とはトヨタが生み出した生産方式。それを物流に応用したのが「ジャストインタイム物流」です。この方式は従来方式とどのように違い、また、どのような効果が期待できるのでしょうか。今回はジャストインタイム物流の基本情報と、物流業界における必要性、メリットと理解する上での注意点について解説します。
ジャストインタイム物流とは「必要なものを、必要な時に、必要な量だけ配送する」物流方式です。「ジャストインタイム」はもともとは製造現場において「ジャスト・イン・タイム生産方式(リーン生産方式)」で使われていた用語で、自動車の大手メーカーであるトヨタが開発しました。大量生産が主流とされていた時代に、在庫や作業のムダを排除し、生産効率を上げるために考え出された手法です。「必要なものを必要なだけ作る」ことにより余計な在庫を抱えない、また、その時点で必要な生産に注力できるという大きな利点があります。
ジャストインタイム物流は、上記の考え方を物流に応用したものです。英語では「Just in Time Delivery」と表現されます。ジャストインタイム物流では、定時配送や多頻度小口配送を実施し、小売店の欠品をなくすことを目指しています。小売業ではコンビニエンスストアが先駆けとなり、ジャストインタイム物流の考え方が浸透してきました。
ジャストインタイム物流の必要性を、物流業界の現状と背景、ニーズの点から解説していきます。
インターネットが社会インフラとしての役割を果たすようになり、物流現場にも大きな変化が訪れました。ネット通販の拡大により、荷物量が急増。小口の配送ニーズはこれまで以上に高まり、加えてスピード化や配送に対してのニーズの細分化が求められるようになっています。
そうした中、課題となっているのが慢性的な人手不足です。社会的に現役世代の人口減少が深刻化していますが、特に物流分野では近年、著しい労働力不足の傾向が見られます。2019年にトラックドライバー不足を訴えている企業は、全体の約7割。今後の改善につながる明るい材料は、いまだ見えてきていません。人手不足が加速する物流においては、効率化、最適化が最大かつ速やかに解決しなければならない課題とされています。
課題解決に向け、今の物流現場で求められているのは、配送する商品量やルートの最適化です。配送スケジュールを適切に組むことで効率を向上し、多頻度小口配送への対応をしていく必要があります。顧客側が要求する定時配送の遵守、適切な商品量の配送による欠品防止を意識しながら、いかにムダのない配送ができるのかを考えていかなければなりません。
ジャストインタイム物流の導入は、物流現場に以下のような効果がもたらされることが期待されます。
ジャストインタイム物流の導入で期待できるメリットを紹介します。
ジャストインタイム物流では、少量の商品を頻繁に補充できます。小売店や各販売事業者は、多様な消費者ニーズに対応できるようになるため、顧客満足度の向上につながります。必要な時に必要なモノが手に入ることで、信頼性の獲得にも寄与します。
先にもありましたが、ジャストインタイム物流により保管スペース・在庫管理費の削減が実現できます。スペースにかかるコストだけではなく、記帳・仕分け・棚卸・出庫など作業負担の軽減も期待できます。各段階でかかっていた費用が減ることで、最終的に商品コストに反映される可能性もあります。
大量の在庫を抱えずにすみ、物品の入れ替わりが可視化しやすくなります。在庫・欠品・補充のサイクルがつかみやすくなるため、物流計画の精度向上にも貢献します。人員配置や在庫量調整、車両の手配といった物流における問題点を全体的に把握しやすくなり、配送遅延や未達などの業務上のリスクを回避できます。
ジャストインタイム物流にも課題はあります。主な課題とその解決方法について解説します。
製造現場で生まれたジャストインタイム(JIT)は、現在さまざまな事業に応用されています。物流業界においては、大手運輸業者でも導入していますが、ジャストインタイムの弱点を克服するために独自の工夫が用いられています。例えば法人向けのミニチャーター便サービスでは、トラック1台を貸切るほどの荷物がない場合の配送コスト削減に役立っています。コンビニエンスストアで採用されているのは、商品廃棄を防ぐため一度に運ぶ量を減らし、回数を分けて各店舗に配送する方式。こちらもジャストインタイム物流の応用です。現代の物流ニーズに対応するため、各社は独自の工夫を凝らしながらジャストインタイム物流を活用しています。
参考: