物流業界においてもっとも重視されるのは、売上に対するコスト比率や在庫回転率、そして誤出荷率です。中でも誤出荷は、荷主・配送先からの信頼に関わる大きな問題に発展する可能性があるため、しっかりと対策を行わなければなりません。今回は誤出荷が起きる状況からその原因を探り、改善に向けたポイントについて解説していきます。
誤出荷は名称通り出荷の際に起こるミスを指し、流通にたずさわる事業者としてあってはならないものです。初めに、誤出荷に関する基本的な知識と、起こりがちな例について確認していきます。
誤出荷とは、出荷する商品や数量・発送先を間違えることです。本来出荷する商品とは違う商品を出荷してしまったり、数を間違えたまま相手側に送り届けたりしてしまうため、取引先からの信頼を損ないかねません。
誤出荷の発生を表す指標として、「誤出荷率」(PPM)があります。これは、作業件数におけるミスの発生割合を表す数値で、以下の式から求めることができます。
・誤出荷発生件数÷作業件数×100万=誤出荷率
誤出荷率の単位である「PPM」は、もともとは気体の濃度を表す際などに用いられる単位です。物流業界においては「PPM」により、誤出荷の発生割合が示されます。「PPM」の目安としては、一般的には誤出荷率0.01%以下が目標値とされています。これは一万分の一の割合ですが、誤出荷は経営上の大きなリスクとなるため、当然限りなくゼロが望ましいといえるでしょう。
起こりがちな誤出荷とは、「誤数」「誤品」「誤発送」の3つです。具体的には以下のような例があげられます。
誤出荷はときに甚大な損害を引き起こす場合もあります。誤出荷による主な影響を確認します。
誤出荷が重なると、顧客や取引先からの自社への信頼が大きく損なわれます。取引停止や契約解除につながる恐れもあります。誤出荷からキャンセルが生じるケースも少なくありません。そうなれば利益を失うだけでなく、余った商品の引き受けにより、損害が生じます。そして、誤出荷により不利益が生じれば、大きなトラブルへ発展することも考えられます。訴訟が起これば、社会的イメージの低下につながります。
出荷先の誤りによる個人情報の漏えいは、現代社会において大きな問題です。出荷内容が第三者に知られてしまうことで、相手先の事業に支障が生じるリスクもあります。単なる「商品の間違い」では済まされない事態です。
誤出荷は業務上のいずれかの時点での、人為的なミスです。記録との差異発生の原因となり、欠品・過剰を引き起こす可能性が出てきます。誤出荷がたびたび発生するのは、在庫トラブルを抱えやすい状態にあると考えられます。早期に改善を図る必要がありますが、原因究明の手間がかかり、訂正するための大規模な棚卸が必要となるといった、業務への大きな負担を招きます。
誤出荷はなぜ起こるのでしょうか。誤出荷の原因となりやすい場面について、解説します。
出荷指示の時点ですでにミスが生じていると、途中で誤りに気付くことができません。例えば、数量・品番・コード・識別番号といった注文情報について入力ミスがあると、そのまま積み込まれ、出荷されてしまいます。また、仕様の変更などで新旧ロットが存在する商品では、新旧ロットの出荷順を取り違えるといったケースも考えられます。
ピッキングや仕分け時にも、誤出荷の原因が潜んでいます。管理タグの貼り間違いがあると、データでは正しいと認識されたまま配送に至ります。類似アイテムの取り違えや数え間違い、セット品の入れ忘れといったことも、ほんの不注意から発生しやすいミスです。また、宛先確認のミスは、指示書の取り違えなどから起こると考えられます。
配送伝票の貼り間違いは、ピッキング後に配送伝票を一括出力で貼付していく手法で起こりがちなミスです。伝票貼付時には、ミスが発生しやすいという意識が必要です。積み下ろしのミスは、ドライバーばかりに責任が問われますが、運用側の管理体制の問題が指摘されるケースも少なくありません。過重な労働や配送ルートの未整備が原因でミスが引き起こされている可能性もあります。荷積みや配送指示への工夫が求められます。
誤出荷は人的ミスが根本にありますが、原因は一つではなく、複合的であるという認識を持つことが重要です。誤出荷を一つでも発生させないためには、不断の努力と工夫が必要です。誤出荷をなくすためのポイントとしては、以下のようなものがあります。
誤出荷は現場だけの問題ではありません。最終的には企業の社会的な信頼性に関わる、重要な課題です。誤出荷ではヒューマンエラーが原因となっているケースが多く見られますが、その場だけの対処では再発を防止できません。エラーやミスの根本的な原因を突き止め、排除していく必要があります。ルールやフローの見直し・整備、テクノロジーの活用による効率化などが誤出荷防止のための有効策になると考えられます。
参考:
・誤出荷はなぜ起こる?誤出荷をゼロにするための原因究明と対策|NEW WAY
・【倉庫管理者向け】誤出荷における原因と対策|物流現場通信
・誤出荷を生む作業ポイント3つと、原因別の誤出荷対策|システムライフのナレッジコラム
・誤出荷とは?発生する原因やミスを減らす対策を詳しく解説!|ITトレンド
・誤出荷率を考える|トミーズコーポレーション