流通業務の総合化、および効率化の促進に関する法律「物流総合効率化法」の改正法が、平成28年10月に施工されました。これは、流通業務に必要な労働力確保が難しくなっていることへの対応策とされています。この物流総合効率化法とは、どのような法律で、どのように労働力不足を解消できる仕組みになっているのでしょうか。その制度と認定例をご紹介します。
物流総合効率化法について、概要と適用範囲、目的に分けて見てみましょう。
物流走行効率化法は、正式な名称を「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律」といいます。この法律は、国土交通省によると、次のように説明されています。
「流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(物流総合効率化法)は、流通業務(輸送、保管、荷さばき及び流通加工)を一体的に実施するとともに、「輸送網の集約」、「モーダルシフト」、「輸配送の共同化」等の輸送の合理化により、流通業務の効率化を図る事業に対する計画の認定や支援措置等を定めた法律です。」(国土交通省「物流総合効率化法「総合効率化計画」認定申請の手引き」(PDF)より)
こうある通り、物流業者が協力・連携して流通の効率化や省力化に取り組むとき、認定条件にあっていれば、それを支援するという制度について定められています。支援の内容は以下のようなものです。
このような支援を受けるためには、定められた条件に適合し、認可を受ける必要があります。
物流走行効率化法で定められた支援対象となるには、「総合効率化計画」を提出し、認定されなければなりません。これには大きく分けて、4つの条件があります。
物流総合効率化法が目的としているのは、物流の効率化を通した先にある効果です。消費者の需要は「欲しいときに、欲しいものを、欲しい数だけ」というように変化しています。これにより貨物は、小口化・多頻度化し、人手不足の一因となっていますが、これを解消するのも目的の1つです。同時に、2社以上が協力・連携することで、現場単位での労働力不足を補うのも、狙いといえるでしょう。
また、効率的な流通を行うことで、CO2排出量を含めた、環境負荷の低減にもつながります。これらをすべて合わせて、国内産業の国際競争力を、総合的に強化していこうというのが、物流総合効率化法の大きな目的です。
物流総合効率化法における、支援制度の対象となる効率化の方法として、「輸送網の集約」「輸配送の共同化」「モーダルシフト」があります。この方法の中で、特に認定例が多いのが、モーダルシフトです。
モーダルシフトとは、それまでトラックによって行われていた輸送を、大量輸送ができる、海運や鉄道での輸送に切り替えることをいいます。このモーダルシフトの導入と、物流総合効率化法の認定に積極的なのが、佐川急便です。同社は関西地区の中継センターから東京地区中継センターまで、トラック輸送していた部分を、貨物列車で輸送する方法に、モーダルシフトしました。SGフィルダーと連携したこの取り組みは、千葉県の顧客に対し、輸送工数を削減することができたとして、総合効率化計画に認定されています。
また、商船三井フェリー、大東実業、佐川急便の3社が連携して取り組み、認定を受けたのは、関東から九州への輸送についてです。それまで幹線輸送を担っていたのはトラックでしたが、容積の大きなトレーラーに荷を積み、それを海上輸送する方法へとシフトしました。これにより、CO2排出量が52%、トラックドライバーの労働時間は、90%削減することに成功したとしています。
物流総合効率化法の認定については、いくつか注意しておきたいこと、知っておくと、有利なことがあります。
物流総合効率化法の認定に向けて、流通業務施設の整備をするとき、開発許可を受ける場合は、関係行政機関との事前調整が、重要なポイントとなります。そのためには、地方運輸局・地方自治体との十分な調整が必要です。また、建設予定地が農地の場合には、農業委員会による、農地転用許可も必要となります。
物流総合効率化法の認定計画によって、新増設した営業倉庫は、税制特例措置の対象となる場合があります。所得税や法人税など、国税の特例措置対象となるのは、次のような条件を満たす営業倉庫です。
固定資産税や都市計画税など、地方税の特例措置対象となるには、次の条件が必要です。
このような条件に適合していれば、税制特例措置の対象となりますので、メリットを有効活用できるよう、制度を理解しておきましょう。
物流総合効率化法について、概要や目的、支援対象の範囲、認定事例などをご紹介しました。物流総合効率化法は、日本の物流業界の人手不足を解消するだけでなく、国際競争力を維持・確保することも目的としています。その認定例の中でも、モーダルシフトは、全世界的に取り組むべき、環境負荷にも関わる重要な位置づけです。今後もモーダルシフトによる、物流総合効率化法の認定例は、増えていくことが予想されます。
参考: