トレーサビリティという言葉を聞いたことはあっても、詳しい意味や目的についてはぼんやりとしか理解できていないという方もいらっしゃるかも知れません。今回はトレーサビリティについて解説しながら、そのなかで梱包資材がどのように重要なのかを考えます。
まず、トレーサビリティとはどのようなものでしょうか。
トレーサビリティは、トレース(追跡)とアビリティ(能力)の組み合わせによる造語で、日本語では追跡可能性とも呼ばれます。ISOにも定義されており、それによると「考慮の対象となっているものの履歴、適用又は所在を追跡できること」とされています。ですので、トレーサビリティが求められている場合には、製品を固有の識別を用いて管理・記録していく必要があるとされています。簡単にいうと、次のようなことをわかるようにしておくべきという考えです。
では、なぜトレーサビリティが重要視されるようになったのでしょうか。製品・商品に問題が発生した場合、製造者・販売者は問題に対し有効な対策を迅速に取らなければなりません。このとき、トレーサビリティが行われていなければ、どこに問題の発生原因があるのかを把握することができず、対応は遅れていくことになります。また、問題の発生原因を突き止められていないため、有効な再発防止策をとることもできず、同様の問題が繰り返される可能性もあるでしょう。
トレーサビリティにより製品・商品についてのさまざまな履歴、情報が記録として残されていれば、そこから問題の発生原因を探ることができます。問題の発生原因をすみやかに把握することで、その後の迅速な対応が可能になります。さらにそれらの情報を、再発の防止、製品・商品・サービスの品質向上、安心感や信頼度の向上に活用することができ、企業としてのイメージアップにつなげることもできるのです。
トレーサビリティは見る範囲、見る方向により2種類の分け方ができます。
特定の工程に絞った追跡が可能なため、製品の品質維持・安定化、作業の効率化を実現します。
梱包資材とトレーサビリティは、どの分野においても深い関わりがあります。その中でも特に重要視されているのが、食品分野です。梱包資材と直接触れたものが消費者の口へと運ばれる食品分野では、梱包資材のトレーサビリティが非常に重要視されています。
また、自動車業界を含む製造業の分野でも、トレーサビリティの項目として梱包資材は重要な位置付けにあります。品質維持や輸送状況の管理・把握といった観点から、梱包資材がどこから納入され、どのように梱包され、どのような状況で輸送されたのかを記録し、保管しているのです。
しかし、多品種を取り扱う企業では、人の手で数千・数万種類にも及ぶ梱包資材の情報を管理し記録することはほとんど不可能といえます。そこで多くの企業が導入しているのが、トレーサビリティに関する情報を集積・保管して検索できるようにした、トレーサビリティシステムです。トレーサビリティシステムは、バーコードやICタグにより情報を管理します。このようなシステムにより、さらに迅速な対応と再発防止策の検討、スムーズな商品回収や原因分析が可能となるのです。
トレーサビリティは、製品に関する問題発生時に素早い対応をとるためのプロセスとして必須となりつつあります。また、問題への対応だけでなく製品や商品、さらには企業としてのレベルアップにもつながる可能性を持っていることも見逃せません。その中でも、梱包資材は多くの分野でトレーサビリティと深い関わりを持っているのです。
参考: