梱包材入門【発泡ポリエチレンシート編】多機能緩衝材の特性と用途
あらゆる分野で活躍している梱包資材に、発泡ポリエチレンシートがあります。この発泡ポリエチレンシートが、工業分野での緩衝材としてだけでなく、農業や建築の分野でも使われているのにはどういった理由があるのでしょうか。その特性と使われ方をご紹介します。
発泡ポリエチレンシートとは
発泡ポリエチレンシートとはどのようにして作られているのでしょうか。また、さまざまな分野で使われている理由を考えてみましょう。
空気とポリエチレンが融合して新たな姿に
発泡ポリエチレンシートとは、気泡を内部に持たせたポリエチレンをシート状に成形したものです。この気泡は独立気泡と呼ばれる構造で、それぞれの気泡はつながっておらず、気体や液体が通り抜けることはできません。この構造のために、発泡ポリエチレンシートは緩衝性や保温性、防水性といったさまざまなメリットを持っているのです。一般的な製造法としては、材料となるポリエチレンに発泡剤を混ぜ、シート状に押出成形する方法がとられます。
高機能な緩衝材
ポリエチレンと独立気泡の特性をあわせ持っている発泡ポリエチレンシートの、緩衝材としてのメリットを具体的に見てみましょう。
- 緩衝性
独立気泡がエアクッションとして働き、優れた緩衝性を発揮します。 - 軽量
多量の空気を含むため非常に軽く、運搬や梱包時にも少ない負担で作業ができます。 - 柔軟性
柔軟性に優れるため、対象の形状に合わせて丸めることもでき、綺麗に包むことができます。 - 撥水性・防水性・防湿性
独立気泡は内部に水が染み込まないため、防水性に優れ、湿度の影響を受けず、さらにポリエチレンの特性から高い撥水性も持っています。 - 断熱性・保温性
内部に多くの空気の層を持つため、断熱性と保温性に優れています。 - 無味無臭・耐薬品性
ポリエチレンは無味無臭で耐薬品性のある樹脂です。食品に触れても影響を与えず、科学的な変化もありません。
発泡ポリエチレンシートの種類
発泡ポリエチレンシートを使っている現場では、商標名で呼ばれていることも多いのではないでしょうか。発泡ポリエチレンシートの代表的な商標名と規格には次のようなものがあります。
代表的なメーカーと商標名
- JSPの「ミラマット」
世界で最初に無架橋法での高発泡ポリエチレンシートを開発したのがJSPです。白い一般的なものから、ピンクやライトグリーンの色のもの、アルミを融着したものもあります。 - 積水化成品工業の「ライトロンS」
白のほかブルーもあり、カット加工や袋状への加工、エンボス加工や印刷もできます。 - 酒井化学の「ミナフォーム」
白・ピンク・ブルー、帯電防止品などがあります。クロスやクラフト紙、ポリエチレンフィルムやPETフィルムとミナフォームとを融着した「エサノン」という複合品も提供されています。
発泡ポリエチレンシートの規格
発泡ポリエチレンシートは各メーカーでさまざまな厚みのものがあり、積層構造により8mmや10mmといった厚さのものもあります。薄いものは0.5mmからあるので、箱とのスレ防止にも使われます。
また、販売される形状で最も多いのはロール状のものです。多くの場合は必要なサイズに裁断して、梱包の現場に届けられます。
発泡ポリエチレンシートのサイズに関する標準規格はありませんが、品質に関してはJISに規格があります。物性として、試験方法はJIS K 6767に、発泡プラスチック保温材としてはJIS A 9511に規格されています。
発泡ポリエチレンシートの用途
すでに見たような多くの利点から、発泡ポリエチレンシートはさまざまな用途に使われています。最も代表的な使い方は、シート状のものでガラス製品や陶器を包んでテープ止めする方法です。また、テレビや家電、精密機器などの梱包には、袋状に加工した発泡ポリエチレンシートもよく使われています。
また、発泡ポリエチレンシートの用途は、こういった梱包材としてだけではありません。一見関連がなさそうな農業分野でも活躍しています。断熱性・保温性に優れていることから、ビニールハウスや露地栽培の保温材、育苗用の保温カバーに使われます。また、シートと成形法は異なりますが、りんごや梨を包む青果ネットも発泡ポリエチレン製です。
さらに、建築分野では床下や壁内に防湿・防水断熱材として使われ、身の回りではレジャーシートや床用保温シート、レジャーシートや保冷バッグにも使われています。
このように、発泡ポリエチレンシートは梱包材、緩衝材、断熱材、保温材として、あらゆる分野で活躍しているのです。
発泡ポリエチレンシートはメリットだらけの優れた緩衝材
発泡ポリエチレンシートの特徴と用途についてご紹介しました。ミラマットやライトロンS、ミナフォームといった製品に代表される発泡ポリエチレンシートには、緩衝材、あるいは梱包材として優れた数々の特性があります。緩衝目的だけでなく、保温や断熱、防水や擦り傷防止など、多くの場面で活躍しています。現在使用中の緩衝材と比較し、発泡ポリエチレンシートのほうが適しているかどうかを再検討してみてもよいかもしれません。
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参考:
- ミラマット®(高発泡ポリエチレンシート・発泡ポリエチレン)|株式会社JSP
- ミラマット|日成化工株式会社
- ライトロンS 発泡ポリエチレンシート|セキスイ・パック
- JIS K 6767:1999 発泡プラスチック-ポリエチレン-試験方法|kikakurui.com
- JIS A 9511:2009 発泡プラスチック保温材|kikakurui.com
- (編集者註:ミナフォーム|酒井化学工業株式会社 公式ホームページは現在リンク切れ)