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【梱包道場】生分解性プラスチックが期待されるサステナブルな理由

【梱包道場】生分解性プラスチックが期待されるサステナブルな理由

 
【梱包道場】は、トヨコン社員・木村ラマヌジャンが、設計や素材など、梱包の基本的な知識について学んでいくシリーズです。
 
~ある日のトヨコン・豊川営業所~

ラマヌジャン「先輩、お昼ですよ! 今日はあの定食屋さんに行きませんか?」

K先輩「ん? もう昼か。そうだな、あそこの焼き魚定食はうまいもんなぁ。おまえいつも頼むよな。」

ラマヌジャン「ううっ……いやぁ……今日は野菜炒め定食にします……。」

K先輩「まあ野菜炒めもうまいが……なんかおかしいぞ? どうした?」

ラマヌジャン「実はこの前、海洋ゴミの問題について書いてある記事を読んで……。」

K先輩「ああ、確かに海洋ゴミは世界的な問題だな。でもそれが野菜炒めとどう関係するんだ?」

ラマヌジャン「野菜炒めじゃなくて焼き魚のほうですよ! 今や魚の体内には細かいマイクロプラスチックが取り込まれてるって言うじゃないですか。それを考えたらもう焼き魚を食べても発泡スチロールを食べてる気分になっちゃうんですよ。どうしましょう先輩!」

K先輩「ど、どうしましょって言われてもな……。大丈夫、魚は魚の味だから、とりあえず昼飯食べながらプラスチックごみの問題について話そうか。」

ラマヌジャン「わかりました。じゃあ行きましょう先輩!」

K先輩「途中でも軽く現状を説明しながら歩いて行くかあ。」

プラスチックごみの問題と現状

米国政府に提出されたプラスチックごみに関する報告書によると、世界のプラスチック生産量は増加を続け、2015年には3億8100万トンに達していると報告されています。これは、1966年と比較して20倍の量です。生産量の増加に伴い廃棄量も増加し、海に流れ出るプラスチック廃棄物は年間800万トンと推察されています。
 
こういった海洋プラスチックごみは、生態系の破壊や水質汚染など深刻な環境危機につながります。この報告書では、現在の生産状況が続き対策が講じられなければ、2030年までに海洋プラスチックごみの投棄量は年間5300万トンまで拡大する可能性があるとしています。
 
プラスチックごみについては、海外だけの問題ではなく、日本にとっても深く関わりのある問題です。複数の国の研究者が調査した使い捨てプラスチックに関する報告書では、2019年における使い捨てプラスチックの廃棄量を国ごとにランキングした結果を公表しています。このランキングにおいて、世界の中で日本は4位と、使い捨てプラスチックの廃棄量は高い位置にあります。
 
これは海洋への流出量ではなく、適切な方法と不適切な方法で処分された量の総計ですが、流出するプラスチックごみの原因になる可能性の高さを表していると言えます。また、この報告書では世界の使い捨てプラスチックの廃棄量も公表され、2019年に世界全体で1億3000万トンが廃棄されているとしています。
 
このようなプラスチックごみに関する状況について世界が認識し、多くの企業や一般の人も関心を高め始めています。日本でも大きな問題であり、消費者庁が発行する令和2年版消費者白書ではプラスチックごみの問題に触れています。この中で、捨てる量を減らさなければならないと強く感じるものとして1位になったのが「プラスチックの容器包装」です。
 
このような消費者意識の変化は、企業としての責任やマーケティングにも関係してくるのではないでしょうか。プラスチック包装に関して何かしらの対策をとっている企業は消費者からの好感度を得やすいよう社会が変化しつつあると考えられます。
 
K先輩
「今はプラスチックごみの問題は世界の課題として注目されているだけでなく、日本の包装資材業界にとっても大きな課題となっているんだ。」

ラマヌジャン「僕たちにとっても他人事じゃないじゃないですか!」

K先輩「そうだなぁ。まあ定食屋についたから焼き魚定食を食べながら話すか。」

ラマヌジャン「ますます食欲が……。もうぼく水だけでいいです……。プラスチックがゼロにならない限り何も食べられない気がしてきました。」

K先輩「食べておかないとだめだぞ? ほらおごってやるから。野菜炒め定食でいいな?」

ラマヌジャン「じゃあ食べます!」

K先輩「即答だな……。あとな、プラスチックをゼロにするっていうのは今の社会ではほぼ不可能なんだ。」

K先輩「野菜炒め定食ひとつと、焼き魚定食ひとつください。」 

プラスチックをゼロにするのは非現実的

プラスチックごみの問題は世界の課題となっています。しかし、プラスチック製品は生活用品から機械部品にいたるまでさまざまな場所で使用され、代替品を同条件で用意するのは難しいものも多いのが現状です。そのため、プラスチックを一切使用しないで現代の社会の仕組みを維持していくのは不可能に近いと言えます。
 
例えば、食品包装では外力や環境変化によるダメージから食品を守り、品質保持期限を延長する役割があります。これは、プラスチック包装による密閉性や衛生性があって実現できている面も大きい機能です。もし、品質保持期限が短くなれば、プラスチックごみ問題と並んで関心の高い食品ロスを増やすことにつながってしまいます。
 
このように、今の社会ではプラスチックの持つ性質に大きく依存しているのが現状です。プラスチック製品の機能なしで現代の生活や産業を維持することは困難であり、不可能に近いと言えます。
 
そのため、プラスチックについては持続可能な目標を考える必要があります。プラスチックの使用をゼロにするのではなく、別の角度からの解決策を考えなければなりません。
 
ラマヌジャン
「ほれひゃあ、ふらふひっくの……」

K先輩「飲み込んでからしゃべろうな?」

ラマヌジャン「それじゃあ、プラスチックの問題は諦めるしかないってことですか!? 包装資材業界はこのままでいいんですか!? 僕はずっと焼き魚定食が食べられないんですか!?」

K先輩「いや、持続可能な対策を考えることが大事なんだ。つまり、プラスチックの使用量や廃棄量をゼロにするんじゃなくて、プラスチックが不適切な方法で投棄されてそのまま残ってしまう量をゼロにすればいいんだ。」

ラマヌジャン「リサイクルってことですか?」

K先輩「それも大事だ。だけどそれだけじゃないぞ。自然に還るプラスチックが開発されているんだ。これならそのまま残ることがないから微細化されてマイクロプラスチックになる心配もない。」

ラマヌジャン「自然に還るプラスチック!? それは気になります!」 

注目される生分解性プラスチックとは

自然に還るプラスチックとして開発されたのが、生分解性プラスチックです。生分解性プラスチックは、これまでのプラスチックと同様の性能で使うことができ、使用後には水と二酸化炭素に分解されます。微生物の働きにより分子レベルまで分解されるため、自然界で循環するのが特徴です。

生分解性プラスチックの種類

生分解性プラスチックはいくつかの種類に大別されます。
 

  • 微生物産生系
    微生物の多くが体内でポリエステルの一種をエネルギーとして蓄積していることに着目して開発された生分解性プラスチックです。ポリプロピレンに近い融点や破壊強度を持ち、現代の多くの硬質プラスチック製品を生産している射出成形も可能です。また、フィルムやシートへの加工も可能です。
     
  • 天然物系
    植物によって作られるセルロースを改良したセルロース誘導体は、半硬質プラスチック製品として実用化されたものがあります。また、とうもろこしやジャガイモ、穀類などに含まれるデンプンは、単体ではプラスチックの性質はないものの、他の生分解性プラスチックとブレンドしてプラスチック製品に加工されています。
     
  • 化学合成系
    代表的なのはポリ乳酸で、農業用シートや食品トレイ、レジ袋など広い分野で製品化されています。また、3Dプリンターのフィラメントとしても使われるため、今後の活用の可能性も注目されています。このほか、ポリブチレンサクシネート系(PBS,PBSA)、ポリカプロラクトン、ポリビニルアルコール(PVA)などが実用化されています。また、ポリグリコール酸(PGA)、変性ポリエチレンテレフタレートなどの開発も進んでいます。

生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの違い

自然由来のプラスチックとして注目を集めたバイオマスプラスチックがあります。これは生分解性プラスチックとどのように違うのでしょうか。
 
バイオマスプラスチックは、製造原料の種類によって規定されるものです。バイオマスとは「再生可能な、生物由来の有機性資源で化石資源を除いたもの」を意味し、生物由来の材料で作られるのがバイオマスプラスチックです。
 
一方、生分解性プラスチックは製品として使用後の機能に重点をおいたものです。使用後に自然界の働きによって分解され、最終的に水と二酸化炭素に完全に分解されるものを言います。
 
バイオマスプラスチックの中には生分解されるものも多いですが、非生分解性のものもあります。バイオマスプラスチックすべてが生分解性プラスチックというわけではありません。

生分解性プラスチックの研究開発は進んでいる

新たな生分解性プラスチックも開発されています。
 
日常で使用する上では安定し、生分解性に優れ短期間で分解されるPHBHは、日本の化学メーカーが開発した生分解性プラスチックです。PHBHは、EUにおいて全食品接触用途での使用が認められています。
 
また、生分解についての研究も進められ、ポリ乳酸を常温で分解する微生物がイネから発見されたほか、オオムギからも強力な分解菌が見つかっています。東京大学の森林科学研究室では、セルロースが分解される速度についてのメカニズムを解明しました。これは生分解性プラスチックの材料開発に有効として注目されています。
 
このように、生分解性プラスチックに関する研究開発はあらゆる方向から進められています。
 
ラマヌジャン
「生分解性プラスチック、すごいですね!」

K先輩「ああ。これは包装資材を取り扱ううちみたいな会社も含めて、どんどん採用を増やしていくべき材料なんだ。」

ラマヌジャン「でも、従来のプラスチック製品がすべて生分解性プラスチックに変わるなんてまだまだ先ですよね?」

K先輩「そうだな。急ピッチで開発と実用化を進めているだろうけど、日本だけじゃなく世界の問題でもあるし、そうすぐには難しいだろうな。」

ラマヌジャン「僕らプラスチック製品を取り扱う者としても、勉強を続けていかなきゃなりませんね。」

K先輩「とりあえず当面は既存のプラスチック製品も使っていかなければならないから、プラスチックが廃棄されたままになるのを減らす努力をしていくのがいいだろうな。物流業界でも、リデュース(Reduce)、リユース(Reuse)、リサイクル(Recycle)の3Rに取り組んでいければプラスチック廃棄量は減らせるはずだ。」

ラマヌジャン「そうですね! よーし、目標もできたし元気出てきました!」

K先輩「おまえが元気になるとこっちもうれしいよ。」

ラマヌジャン「食欲も出てきました! すみませーん! 焼き魚定食を追加でください!」

K先輩「また食べるのか!? おい、その分はおごるとは言ってないぞー!」

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