検品作業を自動化する必要性とは?自動化のメリットと活用される技術
製造業や物流業において、検品作業は自動化が難しく人の手が必要とされてきた作業です。しかし、今では検品作業も自動化が可能となりつつあります。物流業において検品の自動化を進める背景として、どういった課題があるのでしょうか。検品作業の自動化を進める必要性、自動化によるメリットやそのために活用されている技術などをご紹介します。
進む検品の自動化とその背景
あらゆる分野の製品について、製造されてからユーザーの手に届くまでの間に必ず行われる工程の1つとして検品があります。モノが生産者から消費者へと移動する間に必須の工程であることから、検品は物流の重要な業務の1つと言えます。製造工程の自動化が進む中で、検品作業についても自動化が求められてきました。一方で、判断が必要となる作業は機械で行うのは難しく、結果として人の手や目に頼ってきました。
しかし近年では、この難しいとされた検品を機械によって自動で行う例が増えています。これは、さまざまな技術が進歩することで、人の代わりに機械を導入し検品をすることが可能になったことが大きな要因と言えます。
このように検品の自動化は急速に進みつつありますが、なぜ物流業において検品の自動化が必要とされているのでしょうか。その背景には、物流業が抱える次のような課題があります。
労働力確保が困難
少子高齢化や人口分布の多い世代の定年退職により、日本国内の労働力不足は大きな問題となっています。なかでも、倉庫業界や運送業界など、物流に関する業種では人手不足が深刻化し、明確な対応策をとっていく必要があります。
さらに、インターネット網の整備と進化、誰でもすぐにインターネットに接続できる端末機器の普及により、モノの販売や購入の場はインターネット上へと移行しています。また、新型コロナウィルスの感染拡大によって外出を控える機会が多くなったことで、インターネットでの購入が急激に増加しています。
これは運送・倉庫業の業務を圧迫する要因となり、さらに人手不足を深刻化させています。EC市場は今後も拡大していく見通しであり、現状のままでは物流業界の人手不足はさらに進んでいくと予測されます。
求められる品質管理水準の上昇
あらゆる製品の品質について求められる水準は、年々上昇しています。さまざまな製品が複雑化するにつれて、それに使用する部品の精度も高い基準が求められるようになり、管理水準を上昇させなければならないのが現実です。また、インターネットでの売買において消費者からの返品は物流業の負荷を増大させるため、そういった面でも品質管理の重要性は高くなっています。
DXの遅れ
物流業は比較的DXが進んでいる業種とされていますが、実際は物流大手の企業がDXを進め、中小規模の企業はDXが進んでいないのが現状で、DX格差が大きくなっています。また、中小企業が使うデジタルテクノロジーも、システムは大手の導入したものに合わせなければならず、独自のビジネスモデルを創出するのは困難な状況です。これでは、本来の意味でのDXを実現したとは言えません。
こういった、DXの格差や遅れ、新たなビジネスモデルの創出までを含めた本来のDXが実現されていないことなどを含め、物流業のDXは課題が多いと言えます。
検品を自動化するメリット
こういった物流業を取り巻く背景を踏まえた上で、検品を自動化することでどのような変化が起こるのでしょうか。検品を自動化することにより得られるメリットとして、次のようなことがあげられます。
省力化・省人化
検品を自動化することで人の手による作業を減らすことができます。1人の作業が完全にゼロにならなくても、その人が担当する作業の中で自動化できる部分があり、作業量を30%減らせたとします。これが省力化です。
同様に他の人の作業に関しても、30%や40%の自動化できる部分があり、それらが合わせて100%に達した場合には、1人分の作業を自動化できたことになります。こうして省力化を積み重ねることで、省人化が可能になります。
1人分の省人化が達成されると、1人分の人手不足を解消できたことと同じ効果があります。また、それまで行っていた作業を機械に任せ、人は別の業務に従事できます。
品質安定化と作業標準化
何かを検査する検品作業においても、人の手や目によって行う以上、ヒューマンエラーの発生は避けることができません。また、感覚的な判断が求められるような検査では検査者や時間、体調によっても誤差が生じる可能性はあります。
検品が自動化されると、こういった人に依存することで起きていたミスや誤差がなくなり、再現性が高くなります。また、作業方法も毎回必ず同じ方法で行われるため、作業の標準化も同時に達成されトレーサビリティの向上にもつながります。
ワークライフバランスの実現
検品が自動化されることで、人手不足の緩和につなげることができれば、長時間労働を解消できます。また、それまで検品作業に従事していた作業者は、より創造性の高い業務に従事することが可能になります。
こういった変化は、働き方改革やSDGsにも盛り込まれているワークライフバランスの向上や、やりがいのある仕事の実現につながっていきます。
他社とのサービスの差別化
検品を自動化することで、品質安定やリードタイムの短縮が達成されれば、検品を人によって行っている企業に対しサービスの差別化を図れます。これは荷主が物流業者を選定する上でも判断材料となり、営業上の効果も期待できます。
検品を自動化する技術やデバイス
検品自動化は、さまざまな技術の進歩によって実現しています。検品を自動化するためのツールとして、次のような技術やデバイスが活用されています。
産業用ロボット
自動車産業において、溶接や組立の工程で活用されていることが有名な産業用ロボットは、検品作業でも活用されています。多関節ロボットと呼ばれる人の腕を模したロボットのほか、パラレルリンク型、直角座標型など、比較的安価で速度や位置決めの容易さに特化したタイプもあります。
協働ロボット
人の近くで協力して働くことのできる協働ロボットは、検品作業で広く活用されることが期待されています。従来の産業用ロボットは、ロボットの可動範囲に人が侵入する場合に停止する安全機能と、可動範囲に侵入を防ぐための安全策の設置が必要でした。しかし、規制緩和により一定以下の出力と速度で動くロボットに関しては協働が可能になりました。
これにより、人が担当する検品ラインで人と人との間に、協働ロボットを挟む形での作業が可能です。これは、感染防止対策のような、人と人との距離を大きくとる必要がある場面でも有効です。
IoT
あらゆるものをインターネットに接続するIoTは、検品作業の自動化に大きく貢献した技術の1つです。センサーによって検出したデータをインターネットによって別の場所に送り、処理してフィードバックすることが可能になります。音や光によって、監視担当者に製品の異常を伝えたり、自動的にコンベヤ上から別ラインに流したりと、不良品を除外する工程も自動化が可能です。また、それらによって得られたデータを集計して分析することで、原因究明や不良率からのコスト予測など、次の経営判断に生かしていくこともできます。
コードリーダ
バーコードや二次元コードなどを読み取り、そこから情報を得られるコードリーダは検品にも活用されています。その製品の情報を読み取ることで、検査基準や規格に適合しているかの判断基準を一瞬で参照できます。コードリーダはコンベヤやフォークリフトにも設置できます。
ハンディターミナル
コードリーダを人が持ち運べるようにし、通信機能や画面への情報表示機能を追加したのがハンディターミナルです。ハンディターミナルによる照合や情報の表示も、検品作業の一部を自動化していると言えます。人が持ち歩くことで柔軟な対応ができるのが特徴です。
RFID
RFIDは、電波によって離れた場所にあるタグの情報を読み書きするシステムです。情報の読み書きは非接触ででき、RFID対応ハンディターミナルや、リーダライタと呼ばれる機器が使われます。RFタグを荷物やパレットに取り付けることで管理が可能になり、検品作業やピッキング作業でも活用されています。
カメラデバイス
画像や動画を撮影するカメラデバイスは、コンベヤ上やロボットのアーム先端に取り付けられます。カメラデバイスとして、通常の画像撮影のほか、赤外線カメラやサーモグラフィーカメラなどもあります。高速で移動する錠剤の薬品や、不定形の農作物などもカメラデバイスによって撮影することで判別可能です。
画像認識AI
カメラデバイスによって検出した情報を、検査基準に適合するかを判断するのが画像認識AIです。AIによる判別は、人間では到底不可能な速度での判別が可能で、検品を自動化するだけでなく、高速化、品質安定化も実現しています。
これまで困難とされた検品を自動化することで物流が変わる
これまで検品の業務は自動化が難しいとされてきた工程です。そのため、検品業務には人を配置しなければいけませんでした。しかし、デジタルテクノロジーの進化によって検品業務の中でも特定の作業は自動化が可能になっています。今後は、人とデジタルテクノロジーが協力して作業することで、検品作業の効率化が実現していくようになるのではないでしょうか。
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